猫と日本画がひらく、やわらかな光の世界――伊藤清子インタビュー
幼少期から多様な芸術に親しみ、やがて日本画という表現へとたどり着いた伊藤。鉱物への興味を原点に、独自の技法で描かれる猫たちは、明るく愛らしい存在感を放つ。大病を経た経験や日々の暮らしの中で得た感覚を織り込みながら、作品はどのように生まれているのか。その創作の背景と未来への思いを聞いた。 多様な芸術体験と鉱物への関心が導いた日本画 ――幼少期からどのように芸術と関わってきたのでしょうか。また、数ある表現の中から絵を選ばれた理由を教えてください。 伊藤 幼少期から美術、音楽、舞台芸術、映画、文学等、様々なものが好きで、鑑賞したりやってみたりしていました。結局は長時間やっていても苦にならない絵を描くことを選択しました。 ――日本画を選んだきっかけにはどのようなものがあったのでしょうか。 伊藤 日本画を選んだ理由は、幼少期から鉱物が好きで集めていたことが影響しています。鉱物を砕いて絵具にしていることがよくわかる日本画に魅力を感じました。 浮世絵と富士山の記憶がもたらした創作の転機 ――日頃の制作の中で、どのように伝統や先人の作品と向き合っていますか。 伊藤 普段から制作の休憩や気分転換に浮世絵の画集を眺めていました。 ――近年のご経験が作品に影響を与えたことはありますか。 伊藤 昨年は大病を患い長期入院と大手術をしたのですが、入院した病院は窓が大きく、晴れた日には富士山がきれいに見えました。その富士山の姿にとても勇気付けられ、明るい気持ちを保つことができました。その体験から、北斎がテーマなら富士山が印象的な作品を取り入れたいと思い制作しました。 絵具を盛り上げることで生まれる立体的な猫 ――作品における猫の表現にはどのような工夫がありますか。 伊藤 猫の表現は西洋的な陰影表現でなく、絵具で毛を1本1本盛り上げて物理的に陰影をつける表現をしています。明るく彩度の高い作品にしたかったので、西洋的な陰影表現では違和感があり、また輪郭的な表現でないオリジナルな表現を求めた結果、現在の猫の表現にたどり着きました。 ――猫以外のモチーフについても同様の技法が用いられているのでしょうか。 伊藤 猫以外のモチーフ、モンブラン等も同じように絵具を盛り上げたり荒い絵具で質感をだしたりと物理的に表現しています。 猫と暮らすアトリエと鎌倉の風土が生むモチーフ ――日々の制作環境について教えてください。 伊藤 私のアトリエは2匹の猫が自由に出入りできるようにしています。どちらかがいつも側にいてくれて、描いているのも猫、一休み中に相手してくれるのも猫という理想的な状況です。日々、猫の姿を見ていると、どんなポーズや仕草も可愛くて、描いてみたいと創作意欲を掻き立てられます。 ――制作のリズムや生活環境も作品に影響していますか。 伊藤 また、住んでいる鎌倉は神社仏閣も多く、その影響もあり縁起物等の日本的な要素も取り入れ、猫と組み合わせるようになりました。日々のルーティンはありませんが、現在も療養中のため、余り長時間描き続けてしまわないように、猫が甘えに来てくれたら休憩をするように心掛けています。 七福神や新たなモチーフへ広がる表現と感謝の思い ――今後挑戦していきたいテーマについて教えてください。 伊藤 今後は、まだ描いていない七福神や神様にチャレンジしていきたいです。日本的なもの以外にも、まだ描いていない可愛いものや美味しいものを絵の中で猫に被らせてみたいです。 ――最後に、鑑賞者へのメッセージをお願いします。 伊藤 昨年、大病をしてから色々な方に心配していただき、温かく励ましていただき感謝でいっぱいです。いただいた温かいものを絵でお返しできればと思っています。絵を見てくれた人の心が明るく楽しくなり、私の描いた絵が生活を彩っていただければ幸いです。 「オマージュ北斎2」のmame作品はこちら ↓画像をクリック↓ 伊藤清子 猫かぶり‐だいこくにゃん(凱風快晴) 岩絵具、水干絵具、高知麻紙
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