SPECIAL EXHIBITION

特別展

人気作家の新作展示・販売

猫・ネコ・CAT ― 肉球とモフモフと

油絵から現代アートまで、ジャンルを超えた作家たちが、愛すべき「ネコ」をめぐる表現の限界に挑みます。すべては猫の掌の上。その愛らしさ、神秘性、そして芸術家を魅了する本質に迫ります。猫好きとアート好き、双方の感性を刺激する一夜限りのパラダイムです。

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オマージュ琳派~箔と構図と装飾美

「琳派」の美学を現代に! 銀箔の経年変化に美を見出す鎹さやか、柔らかな光を掬い取る直海かおり、人知を超えた世界を琳派の型で描く八木恵子 。金銀の煌めきと大胆な構図が織りなす、洗練された装飾美の世界が広がります。月刊美術プラスならではの視点で選ばれた3名の作家による競演をお楽しみください。

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ART COLUMN

アートコラム

令和の神 新作展 GOD OF REIWA
月刊美術

令和の神 新作展 GOD OF REIWA

2月にそごう広島店で開催される「令和の神」展は、そうした日本的な神観を、現代の視点からあらためて見つめ直す試みだ。本展には、千住博、手塚雄二、西田俊英といった現代日本画を代表する作家をはじめ、岩田壮平、加来万周、瀧下和之、野地美樹子など独自の表現で注目を集める画家、さらに川﨑麻央、岩谷晃太、玉井伸弥、丁子紅子といった新世代の精鋭たちが名を連ねる。

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熱気と才能の発生源へ。2025年度「卒展」完全ガイド【現地取材ルポ付】
卒展 武蔵野美術大学 鎹さやか

熱気と才能の発生源へ。2025年度「卒展」完全ガイド【現地取材ルポ付】

真冬の風が冷たさを増すこの季節、美大では逆に最も「熱い」シーズンが幕を開けようとしています。それが「卒展(そつてん)」こと、卒業・修了制作展です。 美大生たちが数年間の学生生活の全てを注ぎ込むこのイベントは、単なる「課題発表会」ではありません。そこは、明日のアートシーンを担う才能たちが産声を上げる「デビューの現場」であり、私たち鑑賞者にとっては、まだ見ぬ傑作と出会えるトレジャーハンティングの場でもあります。 今回は、卒展の基本的な楽しみ方から、今年度(2026年早春開催)の見逃せないスケジュール、そして武蔵野美術大学の卒展現場で集めた「学生たちのリアルな声」までを網羅してご紹介します。 そもそも「卒展」とは何か? 「卒展」とは、美術大学・専門学校の最終学年に課される「卒業制作」および大学院の「修了制作」を一堂に展示する展覧会のこと。 多くの学生にとって、これは「学生最後の課題」であると同時に、「作家としての最初の個展(あるいはグループ展)」という意味合いを持ちます。教員による厳しい審査を経て展示される作品群は、絵画、彫刻、デザイン、工芸、建築、映像、メディアアートと多岐にわたり、その規模とエネルギーはプロの美術館企画を凌駕することさえあります。 【現地ルポ】数字と証言で見る「卒展のリアル」~2026.1.18 武蔵野美術大学 鷹の台キャンパス取材記~ 「卒展」の会場には、実際にどのようなドラマがあるのでしょうか。2026年1月18日、卒展会期中の武蔵野美術大学鷹の台キャンパスを訪れ、大学広報担当者と、4名の出展学生にお話を伺いました。そこには、作品の美しさだけでは語れない、切実で濃密な物語がありました。 「カオス」が生む熱気 「うちの場合は展示場所が学科ごとに決まっていないので、デザインと油絵が混じって展示されているなど、いろいろなジャンルが混在しているのが特徴です」 そう語るのは、武蔵野美術大学広報の担当者。日本最大級ともいわれる卒展規模を誇る同学のキャンパスを歩くと、日本画の展示の隣に巨大なインスタレーションがあったりと、予期せぬ出会いが連続します。この「ジャンルレスなカオス」こそが、卒展の醍醐味であり、日本のアートシーンの縮図とも言えます。展示場所がジャンル分けされていない武蔵野美術大学では、特にこのカオスを強く感じました。 自由すぎる「日本画」たち 特に印象的だったのは、伝統的な「日本画」の枠を超えた表現です。 「日本画専攻ですが、デジタル映像と複合させた作品を作りました」と語るのは、学部生の松尾彩花さん。「日本画とは何か?」を問い続け、素材にこだわらず好きな手法で表現する自由さが武蔵野美術大学にはあると言います。 造形学部日本画学科の松尾彩花さん。《想像の絵具》(手前・デジタルアニメーション)、《学び舎》(奥) また、「月刊美術プラス」の特別展「オマージュ琳派~箔と構図と装飾美~」にも出展いただいた大学院生の鎹(かすがい)さやかさんは、校内に根付く独特の気風について「本校には泥臭い精神がある」と語ります。これは、器用にこなすことよりも、作品と実直に向き合い、愚直に手を動かし続けることを尊ぶ「ムサビズム」とも言える姿勢のこと。その言葉通り、彼女自身も蓮の花をテーマにした精神性の高い作品を、朝から晩までアトリエに籠もる猛烈な集中力で完成させました。 大学院美術専攻日本画コースの鎹さやかさん。《迷繊一縷》(左)、《淬火鳳光》(右) 岩絵具や和紙といった画材の定義よりも、固定観念にとらわれず、「何を描きたいか」という魂の在り方が優先される現場の空気が、そこにはありました。 制作費と時間の「投資」 学生たちは、この一瞬のためにどれだけのリソースを投じているのでしょうか。 「制作費は金具も含めて10万ちょっとくらい」と明かしてくれたのは、版画専攻の中村佳伶(rinrin)さん。「快楽脱皮っぴ」をテーマに、版画と愛好するソフビ(ソフトビニール人形)を融合させた異色の展示を展開。「版を彫る行為は、かさぶたを取る快楽に似ている」という言葉には、クリエイターならではのフェティシズムが宿ります。 油絵学科版画専攻の中村佳伶(rinrin)さん。《快楽脱皮っぴ》 油絵専攻の粉川桜雪(こかわ・さゆき)さんも「学内に材料のショップがあるので、自作したキャンバスの費用は抑えられましたが、それでも10万円弱」とのこと。温かみのある「ほっぺた」の表現にこだわり、1ヶ月半毎日大学に通い詰めて描き上げました。 油絵学科油絵専攻の粉川桜雪さん。《ごちそうさまの気持ち》(左)、《きらめきのリズム》(右) 鎹さんのような院生の場合は、そのまま作家への道を進む人の割合も多くなりますが、多くの学部生は美術関連の制作会社やゲーム会社、おもちゃメーカー、デザイナーなどへの就職を決めています。 ただ、「これから院試です」(粉川さん)、「いったん社会に出てから、院に戻るかも」(松尾さん)、「就職して創作活動は趣味として続けるけど、将来的には創作で生計を立てられたらという気持ちもある」(中村さん)など、今後の人生においても「美術」と関わって生きていこうという覚悟が感じられました。 この卒展は、学生時代の「集大成」であると同時に、プロの世界へ羽ばたくための「高価で贅沢な滑走路」なのかもしれません。 広報の担当者はこう締めくくります。 「美術の道を進む方も、離れる方もいますが、ここは皆さんにとっての『やりきった思い出』であり、人生の集大成です」 会場に溢れる熱気は、二度と戻らない青春の輝きそのものでした。 卒展の楽しみ方:2つの視点 卒展の楽しみ方は、大きく分けて「アートファン」としての楽しみ方と、「コレクター(予備軍含む)」としての楽しみ方の2つがあります。 視点A:アートファン・学生として楽しむ ・キャンパスの空気を味わう 多くの卒展は大学のキャンパス内で行われます。歴史あるアトリエ、散乱する画材、そして建築家が設計した美術館級の校舎。それらが醸し出す独特の「美大の空気」を吸い込むだけでも、非日常的な体験になります。美大への進学を希望する高校生にとっては、その学校の雰囲気や校風を知る絶好の機会です。 ・トレンドの萌芽を見つける 学生たちは敏感です。社会問題、テクノロジー、環境、ジェンダーなど、現代社会が抱えるテーマが、若者特有の感性で作品に昇華されています。「いま、何が表現されているか」を見ることは、現代社会の写し鏡を見ることといっても過言ではないでしょう。 視点B:コレクター・購入者として楽しむ 近年、アートマーケットの活況に伴い、卒展は「プライマリー(一次)市場」のさらに手前、「ゼロ次市場」として注目されています。 ・未来の巨匠を探す 村上隆や奈良美智も、かつては無名の美大生でした。卒展は「原石」を自らの目で見つけ出せる唯一の機会です。 ・購入のマナー 多くの卒展では作品販売が行われています。価格は市場価格より抑えられていることが多いですが、値切り交渉などは御法度です。 2025年度 主要美術大学・専門学校 卒展スケジュール(2026年1月〜3月開催分) ※2026年1月21日時点の情報です。最新情報は必ず各校の公式Webサイトをご確認ください。 【東京・関東】 ■ 武蔵野美術大学 今回取材を行った広大な鷹の台キャンパス全体が展示会場に。見応えは随一です。 展覧会名:2025年度 武蔵野美術大学 卒業・修了制作展 会期:①2026年1月16日(金)~18日(日)※終了しました    ②2026年1月30日(金)~2月1日(日)※クリエイティブイノベーション学科、大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコース 会場:①鷹の台キャンパス(東京・小平市)    ②市ヶ谷キャンパス(東京・新宿区市谷田町) URL:https://www.musabi.ac.jp/student_life/event/degree_show/ ■ 東京藝術大学 難関大として知られる美大。上野公園一帯がアートに染まる期間です。 展覧会名:第74回 東京藝術大学 卒業・修了作品展 会期:2026年1月28日(水)~2月1日(日) 会場:東京都美術館、大学美術館、大学構内(東京・上野) URL:https://museum.geidai.ac.jp/exhibit/2026/01/sotsuten25.html ■ 多摩美術大学 学科ごとに日程・会場が異なる場合があるため注意が必要ですが、八王子キャンパスでの展示は圧巻です。 展覧会名:美術学部卒業制作展・大学院修了制作展A日程 会期:2026年1月9日(金)~12日(月・祝)※終了しました 会場:八王子キャンパス(東京・八王子市) URL:https://www.tamabi.ac.jp/news/107262/ 展覧会名:美術学部卒業制作展・大学院修了制作展B日程 会期:2026年3月13日(金)~15日(日) 会場:八王子キャンパス(東京・八王子市) URL:https://www.tamabi.ac.jp/news/107266/ 展覧会名:多摩美術大学博士課程展2026 会期:2026年2月25日(水)~3月8日(日) 会場:八王子キャンパス(東京・八王子市) URL:https://www.tamabi.ac.jp/news/107272/ ■ 東京五美術大学 連合卒業・修了制作展(五美大展) 東京の主要5大学(日芸・武蔵野・多摩・女子美・造形)のファインアート(日本画・油絵・版画・彫刻)が集結。効率よく見比べるならここ。 会期:2026年2月20日(金)~3月1日(日)※2月24日(火)休館 会場:国立新美術館(東京・六本木) URL:https://www.tamabi.ac.jp/news/107269/ ■ 桑沢デザイン研究所 バウハウスの理念を継ぐ、デザイン専門学校の名門。デザインの最前線が見られます。 展覧会名: 桑沢デザイン研究所 卒業生作品展「桑沢2026」 会期:2026年2月27日(金)~3月1日(日) 会場:渋谷校舎(東京・渋谷) URL:https://www.kds.ac.jp/others/kuwasawa2026/ 【関西・中部・その他公立美大】 ■ 京都市立芸術大学 2023年に京都駅近くの新キャンパスへ移転。新校舎での展示に注目が集まります。 展覧会名:2025年度京都市立芸術大学作品展 会期:2026年2月7日(土)〜11日(水・祝) 会場:京都市立芸術大学(京都) URL:https://www.kcua.ac.jp/20260207_sakuhinten/ ■ 金沢美術工芸大学 工芸都市・金沢ならではのレベルの高い工芸作品は必見。 展覧会名:金沢美術工芸大学 卒業・修了制作展2026 会期:2026年2月14日(土)~20日(金)、23日(月・祝)~28日(土) 会場:金沢21世紀美術館 市民ギャラリーほか(石川・金沢市) URL:https://www.kanazawa-bidai.ac.jp/event/44858/ ■ 愛知県立芸術大学 自然豊かな長久手キャンパスでの展示。「木木木(もり)の卒展」として知られます。 展覧会名:令和7年度 愛知県立芸術大学卒業・修了制作展《木木木(もり)の卒展》 会期:2026年2月20日(金)~26日(木) 会場:愛知県立芸術大学キャンパス(愛知・長久手市)、愛知県陶磁美術館(愛知・瀬戸市) URL:https://www.aichi-fam-u.ac.jp/event/002238.html ※以下はその他の主な美術系大学です(順不同)。卒展のスケジュール等の詳細は公式サイトにてご確認ください。 ■ 女子美術大学https://www.joshibi.ac.jp/ ■ 東京造形大学https://www.zokei.ac.jp/ ■ 日本大学芸術学部https://www.art.nihon-u.ac.jp/ ■ 横浜美術大学https://www.yokohama-art.ac.jp/ ■ 名古屋芸術大学https://www.nua.ac.jp/ ■ 名古屋造形大学https://www.nzu.ac.jp/ ■ 東北芸術工科大学https://www.tuad.ac.jp/ ■ 秋田公立芸術大学https://www.akibi.ac.jp/ ■ 京都芸術大学https://www.kyoto-art.ac.jp/ ■ 嵯峨美術大学https://www.kyoto-saga.ac.jp/ ■ 大阪芸術大学https://www.osaka-geidai.ac.jp/ ■ 成安造形大学https://www.seian.ac.jp/ ■ 広島市立大学芸術学部https://www.hiroshima-cu.ac.jp/department/art/ ■ 尾道市立大学芸術文化学部https://www.onomichi-u.ac.jp/arts/art_culture/ ■ 富山大学芸術文化学部https://www.tad.u-toyama.ac.jp/ ■ 九州産業大学芸術学部https://www.kyusan-u.ac.jp/faculty/geijutsu/ ■ 崇城大学https://www.sojo-u.ac.jp/ ■ 沖縄県立芸術大学https://www.okigei.ac.jp/ ※会期等は変更になる可能性があります。お出かけ前には必ず各公式サイトで最新情報をご確認ください。 【まとめ】「むき出しの熱量と初期衝動」を見に行こう! 卒展の最大の魅力は、完成されたプロの展示にはない、むき出しの熱量と初期衝動にあります。今回の取材で学生たちが語ってくれたように、作品の一つひとつには、悩み、楽しみ、そして全てを懸けた「人生の集大成」としての切実なドラマが息づいています。 未来のアートシーンを担う才能が、まさにここで産声を上げています。その瞬間に立ち会えるのは、今、この場所だけです。ぜひ会場へ足を運び、彼ら・彼女らの全力が放つエネルギーを肌で感じてみてください。運命の一作との出会いが、あなたを待っているかもしれません。   執筆:月刊美術プラス編集部

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『月刊美術』2月号見どころチェック~巻頭特集「鉛筆画の極み」ほか
月刊美術

『月刊美術』2月号見どころチェック~巻頭特集「鉛筆画の極み」ほか

2月号の巻頭特集は「鉛筆画の極み」。タブローの下絵としての役割を担ってきた鉛筆画だが、現在は自立した絵画へと進化しています。自身の感性をダイレクトに写し出すこの画材を、唯一無二の武器として選び取り、「鉛筆画の極み」とも言うべき表現へと昇華させる画家30人を編集部が厳選。アーティストたちの仕事と思いから、その多様なる姿を、紹介します。そのほか、好評の連載企画、足を運びたくなる展覧会レビューなど、充実のアート情報が凝縮された一冊。その見どころをギュッとご紹介します。 月刊美術2月号見どころハイライト 巻頭特集:色彩を凌駕するモノクロームの美鉛筆画の極み~編集部厳選の30作家、一挙紹介! >>パイオニアは語る木下晋/篠田教夫/建石修志 >>探究者たちの仕事寺崎百合子/鈴木和道/河内良介/天久高広/南正彦/秋山泉/佐藤裕一郎/勝正光/古賀充/滑川道広 >>挑戦者たちの思い土田圭介/三宅玄朗/吉岡由美子/見崎彰広/小川香織/渡邊光也/森天飛/松尾奈保/安冨洋貴/江副拓郎/岡本実佳枝/杉藤由佳/板倉文香/山田さやか/前川香桜里 >>コラム 多様化する鉛筆画の世界 >>頒布コーナー掲載作家による誌上展覧会 アートトピックス郷さくら美術館で押元一敏さんと染谷香理さんが二人展現代美術の登竜門、Idemitsu Art Award 2025 授賞式開催井下紗希さんが万世橋JAPAN ART BRIDGEで公開制作展 描き下ろし・好評連載村上裕二 先人画家の「術」をたずねて柴田亜美の 「浮世の氣楽絵」齋藤将のくものまにまに土屋禮一の画壇、ちょっといい話土方明司「知りたい! 美のヒミツ」(ゲスト:西房浩二)アトリエ寫眞(安原優、撮影:山下武)わがまま絵画点評—深見東州の世界 今月のこの作家・この作品美術新人賞デビュー2025準グランプリ 中村龍二 中村文俊 団体展レビュー第118回 日展 注目コンテンツ月刊美術プラス特別展「オマージュ琳派 箔と構図と装飾美」開催中 2月号はこんな読者のみなさんにおすすめです ・鉛筆画のアーティストを深く知りたい方・特集で紹介したアーティストの鉛筆画を購入したい方・主要展覧会の予習復習を短時間で押さえたい方 月刊美術 2025年2月号 発売中 購入はこちらから  

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「いい流れ」を絵に託して――直海かおりインタビュー
holy water インタビュー 日本画 琳派 琳派アーティスト 直海かおり 菊のつゆ 霄を凌ぐ

「いい流れ」を絵に託して――直海かおりインタビュー

金箔の眩しさに負けないノウゼンカズラ、水の流れに溶け込む菊、古いグラスから溢れ出す“holy water”。日本画家・直海かおりさんの新作3点には、琳派への憧憬とともに「水」や「流れ」をめぐる一貫した感覚が息づいています。中高生の頃から教科書の尾形光琳・俵屋宗達に「かっこいい」「気持ちがいい」と惹かれてきたという直海さんは、いま改めて“私淑”という琳派の精神をどう受け止め、どんな距離感で自作へと落とし込んでいるのでしょうか。制作の原点から新作の背景、そして作品に込めた願いまでを伺いました。 原風景と絵との出会い ――まず、幼い頃のことから教えてください。絵を描くことは身近な存在でしたか。 直海 はい。実家が魚屋で、家に帰っても誰かに構ってもらえる環境ではなかったので、自然と一人で絵を描いて過ごしていました。裏が白い広告のチラシを探してきて、ボールペンでずっと描いていましたね。手塚治虫さんの漫画が大好きで、その影響も大きかったと思います。 ――中学・高校時代も、描き続けていたのでしょうか。 直海 そうですね。授業中もノートにずっと絵を描いていて、家に帰っても夜通し描いてしまうので、気付いたら外が明るくなっていることも多かったです。でも、周囲の人たちがとても理解のある方ばかりで、大学の付属校に通っていましたが、美術のために外部受験をすると決めたときも、「一番後ろの席で受験勉強をしていいよ」と言ってくれました。 油彩から日本画へ——惹かれた質感 ――最初から日本画志望だったわけではないのですね。 直海 はい。子どもの頃から通っていた絵画教室では、油彩を教わっていました。ただ、高校生の頃に美術館で日本画を見たとき、「マットなのにキラキラしている」という質感にすごく惹かれたんです。 ――日本画絵具への憧れもありましたか。 直海 ありました。近所の画材店に、日本画絵具が瓶に入って並んでいるのを見て、「きれいだな、使ってみたいな」と思っていたんですが、使い方がわからなかったんです。それが、美術館で実際の作品を見たことで、「これだ」と腑に落ちました。 ――進学先として京都市立芸術大学を選ばれた理由は? 直海 好きな日本画家さんの略歴を調べると、京都市立芸術大学出身の方が多くて。「じゃあ、私もここに行きたい」と思ったのがきっかけです。もともと植物を描くことが好きで、抽象的な表現に振れた時期もありましたが、植物はずっと制作の根っこにあります。 自宅近くの白峯神宮。このような神社仏閣をはじめ、日本固有の文化財に囲まれて育った影響は大きいという 琳派との距離感と「私淑」 ――琳派との出会いについても教えてください。 直海 中学・高校の頃、美術の教科書や歴史の美術に関する部分が大好きで、光琳や宗達の図版を見ては「かっこいいな」「気持ちがいい絵だな」と思っていました。当時は、それが琳派だと強く意識していたわけではないんですけど、今振り返ると、影響は確実にあったと思います。 ――特に惹かれている絵師はいらっしゃいますか。 直海 やはり宗達ですね。「元祖」だと思っていますし、誰も超えられない存在だと感じています。人物像も含めて謎が多くて、いつかあちらの世界で会って話をしてみたい人です。光琳や尾形乾山、鈴木其一も好きですが、やはり宗達は特別です。 ――琳派の装飾性については、どのように捉えていますか。 直海 頭で考えてしまうと、違う方向に行ってしまう気がしていて。なので、意識的に「琳派的にしよう」と考えることはあまりありません。感覚的に「気持ちがいいかどうか」を大事にしています。 新作3点に込めた「水」と「流れ」 ――今回の新作は3点とも印象的ですが、共通するテーマはありますか。 直海 「水」や「流れ」ですね。自分の中では、すべてそこにつながっています。 ――《霄(そら)を凌ぐ》について教えてください。 直海 ノウゼンカズラを描いた作品です。沖縄の八重山諸島で初めて見たとき、真夏の強い日差しの中でもどんどん伸びていく姿に圧倒されました。コロナ禍と制作時期が重なったこともあり、花々が助け合いながら空へ伸びていく姿に、人とのつながりを重ねていました。 《霄を凌ぐ》※作品ページはこちら ――《菊のつゆ》は、また違った雰囲気ですね。 直海 菊と水の関係性から発想しました。菊の露は、不老不死の水として語られることもありますよね。菊を主役として大きく描くというより、水の流れの中に菊が溶け込むような構成にしたいと思いました。 《菊のつゆ》※作品ページはこちら ――《holy water》についてはいかがでしょう。 直海 ニューヨークのグッゲンハイム美術館で見た古いグラスがきっかけです。そこから水が溢れ出すイメージが一気に広がりました。朝顔は後から添えたモチーフで、描きたかったのは「器から溢れ出すもの」、つまり時間や人の思いのようなものがあふれ出すイメージがあったんだと思います。 《holy water》※作品ページはこちら 箔の使い分けと、作品が目指す場所 ――箔の使い分けも印象的でした。 直海 《霄を凌ぐ》では、真夏の太陽を表したくて、全面に金箔を貼りました。そこに負けない花を描きたかったんです。《菊のつゆ》では金泥を使って、光がさらさら流れる感じを意識しました。《holy water》はプラチナと銀で、霧がかかったような、控えめなきらめきにしています。 ――作品を通して、大切にしていることは何でしょうか。 直海 「いい流れに乗る」ことです。ネガティブな感情は、作品には絶対に入れたくありません。自分の気持ちが上向いているときにしか描かないと決めています。その流れが、作品を手にした方にも伝わればいいなと思っています。 ――制作前のルーティンがあれば教えてください。 直海 ヒバやヒノキなど、木の香りの精油やお香などを焚いて、好きな飲み物を用意して、ピアノ曲をかけます。気持ちを整えることが、制作の第一歩ですね。 ――今後、挑戦してみたいことは? 直海 風景と人物、そして絹本です。人物は、やはり子供が生まれてからもっと描きたいと思うようになったのですが、まだ思うように描けません。だからこそ挑戦したいと思っています。 また、今後取り組みたいことのひとつとして、生活に必要なもののデザインや絵柄を描くことにも、積極的にチャレンジしていきたいと考えています。琳派の作家たちが手がけた扇や団扇、蒔絵のためのデザインには、今もなお心を打つ素晴らしい作品が数多く残されています。 私自身、扇の絵を描くことにはこれまでも何度も取り組んでおり、大好きな仕事のひとつです。これからは扇に限らず、“用の美”に関わる様々な仕事にも携わっていきたいと思っています。 ――最後に、読者へのメッセージをお願いします。 直海 私の作品を見て、少しでも心が穏やかになったり、和んだりしてもらえたら嬉しいです。怒りやネガティブな感情を、うまく流すきっかけになれたらと思っています。 ――ありがとうございました。 京都にある古い日本画材店「彩雲堂」。毎年春には直海さんの桜の絵が店先に飾られるとのこと 執筆:月刊美術プラス編集部

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