偶然性の亀裂による間隙

【販売期間　2025年11月1日～2026年1月31日】
制作年：2025年
作品サイズ：33.3×24.2cm／４F
額サイズ：43×34cm
素材：墨、シルクスクリーン
支持体：和紙

作品に関するコメント
身体の軌跡は仮想空間内で亀裂となり、間隙を生む。描く行為が描かない痕跡を呼び起こし、より高次の統合へと止揚される。身体と機械、意図と偶然、作為と無作為の境界が一枚の画面で撹乱し、制御を離れた美が立ち現れる。

作家略歴：Shinke Haruma
2002年大阪府出身
2024年3月京都芸術大学 芸術学部 美術工芸学科 卒業
2025年京都芸術大学大学 院修士課程芸術専攻 芸術実践領域 在学中
月刊美術〈美術新人賞デビュー2025〉入選
2024年『春の讃歌展』vol.10（グループ展）

ステートメント
機械によるエラーを排除するのではなく、その技術的限界が生む偶然性を創造的要素として取り入れ新たな美的価値として捉え直す。
制作は二層構造で進行する。第一層では、和紙に墨、または生のキャンバスに絵の具を用いて簡潔な抽象画を描く。描写前に水分を浸透させ支持体の効果を促進する。同時に第二層で、机上に固定したVRを使用し手の動きを仮想空間に記録する。作家は制作中に何が記録されているか知ることができない。
VRの非標準的な使用により、トラッキングのエラーが発生する。これらは身体動作の連続性を断つ「亀裂」となり、作家の意図から逸脱した予測不可能な軌跡「間隙」を生成する。この記録を複製技術により元の絵画に重ねる。
支持体により、描画後の偶然性も誘発される。和紙では繊維方向や湿度条件が独自の濃淡と滲み、生のキャンバスでは絵の具の浸透が予測不可能な形態を形成する。
こうして「過程の偶然性」（エラーによる軌跡の逸脱）と「結果の偶然性」（支持体上での墨の変化）が画面上で交差する。制作行為の時間性とVRの仮想空間、支持体の物理的変化と環境空間という、複数の時空間性が一つの作品に内包される。
「描く」作為的行為が、同時に制御を離れたエラー「描かない」無作為を必然的に生成する。この弁証法的構造により、作家の直接的な意図を超えた創発的な視覚表現が実現される。身体と機械、意図と偶然、作為と無作為の境界を撹乱し、エラーを美的価値へと転換する新たな絵画制作方法論の提示である。