日常のやさしさをすくい上げる——mameインタビュー

日常のやさしさをすくい上げる——mameインタビュー

日常のやさしさをすくい上げる——mameが描く、余白とにじみの世界

漫画家・イラストレーターとして、生活の中の何気ない一瞬を切り取った一枚絵を描くmame。2023年に作品集『愛してるっていってよね』、24年にはイラストコミック集『東京ひとり暮らし女子のお部屋図鑑』(ともに翔泳社)を刊行し、日常に潜む感情や風景を軽やかにすくい上げてきた。本インタビューでは、その創作の原点から、北斎へのオマージュに込めた視点、水彩による表現の魅力、そしてこれから描いていきたい「やさしさ」のかたちについて話を聞いた。

水彩への憧れが育んだ原風景

――表現者としての歩みを振り返り、幼少期の環境や原風景、初めて熱中した制作体験について教えてください。

mame 少女漫画の水彩で繊細に描かれたカラーイラストを眺めるのが幼い頃から大好きでした。

――現在の技法や素材を選択された理由と、その魅力について教えてください。

mame 今回の作品も水彩絵の具を使ったアナログ作品で、幼少期の憧れが自然と滲み出ているのかもしれません。にじみや混色、紙とのなじみから生まれる偶然性など、見ていても描いていても楽しいです。

北斎の余白と表情に重ねる現代性

――今回の「オマージュ北斎2」ではどの作品をモチーフにし、どのような点に共鳴されましたか。


mame 今回は北斎の《酔余美人図》をモチーフにオマージュ作品を制作しました。酔いが回って物思いにふけっているような表情に惹かれたことに加えて、背景をそぎ落とした余白の取り方など、北斎の構図の美しさに共鳴しました。

――その要素をどのように現代的に解釈し、画面に取り入れましたか。
mame 現代の女性にも重なると感じ、ビールケースや缶チューハイを持たせることで江戸と現代の境目をあえて曖昧にし、同じ画面の中でつながるようにしています。

葛飾北斎「酔余美人図」(氏家浮世絵コレクション)  世絵コレクション)
葛飾北斎「酔余美人図」(氏家浮世絵コレクション) 

線とにじみで描くシンプルな表現

――作品の質感やマチエールを生み出すうえで、どのような考えや試みを重ねてこられましたか。


mame 今回は北斎の肉筆浮世絵と同じく「手描きの線と筆致」という条件で描きたかったので、えんぴつ(主線)と水彩というシンプルな画材にしぼって制作しました。

――その素材や技法の選択によって、どのような表現効果を目指しましたか。

mame シンプルな画材にすることで、線やにじみそのものの魅力が際立つように意識しています。

 自然光の中で集中する制作リズム

――日々の制作リズムやルーティンについて教えてください。

mame 制作は昼前に起きて、昼過ぎから手を動かすことが多いです。

――現在の制作環境や時間帯は、作品にどのような影響を与えていますか。

mame 絵の具の色味やにじみは昼間の自然光の下が一番見やすいので、なるべくその時間帯に気合い入れて集中して制作しています。

日常のやさしさをすくい上げるまなざし

――これから取り組みたい表現やテーマについて、どのように考えていますか。
mame これまでも、日常の中にある小さな思いや出来事を描きたいと思って制作してきました。世界がこんなにも不安定に感じられる今、その気持ちは以前よりもいっそう強くなっています。

――鑑賞者にとって、作品がどのような存在であってほしいと願っていますか。

mame これからも特別な出来事ではなく、日々の中にあるやさしさを丁寧にすくい上げていきたいです。見てくださる方にとって、ふと気持ちがほどけるような存在になれたら嬉しいです。

 

「オマージュ北斎2」のmame作品はこちら  ↓画像をクリック↓

mame 酔余のある日図 水彩、アクリル、色鉛筆


執筆:月刊美術プラス編集部

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