「イチオシ作家2026」から5人のアーティストをピックアップ
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『月刊美術』2026年1月号の巻頭特集「画廊が推す注目株が勢ぞろい~イチオシ作家2026」を再編集し、5人のアーティストをフィーチャーしました。新鋭作家カテゴリーから寺野葉と高資婷、日本画カテゴリーから加藤千奈、洋画カテゴリーから今井喬裕と片桐剛。作品や画廊のコメントと併せて、お楽しみください。
「名所美少女百景」でひらく日本画の次章 ~ 寺野葉

日本画の伝統的な技法を用いながら、どこかポップで不思議な世界観を紡ぎ出す作品で人気を博す寺野葉。武蔵野美術大学および同大学院で日本画を学び、FACE2019(損保ジャパン日本興亜美術賞)やSeed 山種美術館日本画アワードへの入選を重ね、百貨店をはじめ各地で精力的に作品を発表するなど、いままさに注目度を高めている新鋭作家だ。
そんな寺野が2025年から本格的に展開するのが、安藤広重の「東都名所百景」に着想を得た「名所美少女百景」シリーズ。単なる美人画ではなく、日本各地の風景や土地に宿る物語性を、キャラクター的魅力と日本画の質感で立ち上げる試みだ。日本百景の新たな解釈として、土地の気配や文化的背景までも映し出すような、瑞々しい表現世界の広がりを期待したい。2026年、確実にチェックしておきたい新鋭のひとり。1997年大阪府生
【プロフィール】
1997年大阪府生まれ。2021年武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻日本画コース修了。24年個展「human」八犬堂(東京)。25年「大美人画展」大垣書店・麻布台ヒルズギャラリー(東京)。第18回福知山市佐藤太清賞公募美術展 佐藤太清賞、FACE2019入選、Seed山種美術館日本画アワード2019入選、アートオリンピア2024 入選ほか。
「美と醜の共存」を表現 ~ 高資婷

台湾出身の高資婷は、日本画における絹本着彩の伝統技法を重んじながら、台湾や中国の神話を題材に、幽玄な気配をまとった女性像を描き出す新鋭作家。
定評ある女性の肌の質感や、熱と湿度を帯びた妖艶な空気感は、裏彩色の効果によってさらに美しく繊細に表現され、さらに古画から着想を得た妖怪や異形の存在を取り込むことで、「美と醜の共存」という独自の世界観を確立している。
2月には日本橋三越での新作展も予定。独自のテーマ性と技法への飽くなき探求が響き合い、さらなる深化と飛躍を遂げていくことが期待される。
【プロフィール】
1992年台北市生まれ。2020年京都府新鋭選抜展 毎日新聞社賞受賞。22年京都芸術大学大学院芸術研究科芸術専攻博士課程修了。京都府新鋭選抜展-ゲーテインスティテュート・ヴィラ鴨川国際交流賞。現在、京都芸術大学非常勤講師。
色で世界をつくり、静けさで心に触れる日本画 ~ 加藤千奈
愛知県出身の加藤千奈は、色彩と岩絵具の質感を重視し、「彩」の豊かさを軸に制作する日本画家。人物や動物、自然や情景など多様なモチーフを扱い、そこに独自の色感を重ねることで、鮮やかでありながら品格を失わない、幻想的でやさしい世界を描き出している。
その表現は、伝統的な日本画の枠にとどまらず、現代の感覚や個人の感性を取り入れた〈今〉の日本画として発展を続けており、作品が高く評価される理由のひとつとなっている。
現代日本画の中でも、〈色彩の詩人〉ともいえる独自性を備え、今後はさらなる色彩表現の深化や海外展開が期待される存在。これからの飛躍に目が離せない作家のひとりだ。
【プロフィール】
1986年愛知県名古屋市生まれ。2012年東京藝術大学日本画専攻卒業。14年同大学大学院絵画専攻日本画領域修了。泰明画廊、ギャラリー和田、長江洞画廊ほかで個展。ART 台北、郷さくら美術館 桜花賞展ほか。現在、名古屋造形大学非常勤講師、名古屋芸術大学非常勤講師。
内面を照らすまなざし ~ 今井喬裕
今井喬裕が描く少女像の魅力は、技術を超えたところにある。人体の構造やわずかな顔の表情の変化を的確に捉え、入念な観察と描写によってその絵は成立している。しかし、その魅力は写実の技によるものではなく、モデルの内面へと迫る画家の視線によって捉えられた人物の核心が作品として眩く輝くことによっている。
作品の中で少女は、人形のように硬いものではなく、この時代に生きるものの感情を映し出す。喜怒哀楽の境界を漂うような微細な表情は、言語化されていない新しい感情を想起させ、鑑賞者の心に静かに寄り添う。型にはまった形式から距離を置き、人間そのものの揺らぎを見つめる姿勢が多くの人を惹きつける。
2018年の開館以来、今井作品を収蔵し展示してきた札幌のHOKUBU記念絵画館と、札幌三越での個展で、その最新作に触れることができる。
【プロフィール】
1986年群馬県生まれ。2009年多摩美術大学卒業。10年白日賞受賞。15年「LA ART SHOW」出展。16年中山アカデミーアートアワード大賞受賞。18年『今井喬裕画集 Radical Classic』、24年『今井喬裕画集 MARGINAL BLACK』刊行。白日会会員。
静かに心を揺らす写実絵画 ~ 片桐剛
片桐剛は、人物・静物・風景と幅広い画題に取り組みながら、独自の静謐な絵画空間を生み出す画家。透徹した観察眼のもと、細部を決して疎かにせず描き切る姿勢は圧巻で、その描写には上品な色彩と優しい光が息づく。
彼が捉えるのは、私たちが何気なく過ごす日常の中に潜む静けさと、そこに宿る深い生命感。生き物へと向けられた温かい眼差しや、落ち着きのある静物画の世界観は、見る者に安心感を与え、空間にすっとなじむ。現実の単なる再現にとどまらず、日々の在り様そのものを問い直す片桐の絵画は、静かに心を揺らす力を持っている。
【プロフィール】
1980年栃木県生まれ。2007年文星芸術大学油画専攻卒業。03年ふるさとの風景展奨励賞。04年栃木県芸術祭奨励賞。08年宇都宮エスペール賞受賞。全国の画廊、百貨店で個展開催。無所属。