北斎への共鳴と、現代に息づく「ずれ」の美学――原田ちあきインタビュー
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幼少期に絵を描くことを制限されながらも、インターネット黎明期の体験を原点に創作を続けてきた原田ちあき。デジタルイラストへと移行し、線を削ぎ落とすことで到達した現在の画風には、葛飾北斎への強い共鳴がある。子育てと制作を両立する日常の中で育まれた感覚や、大阪という土地の空気感もまた作品に影響を与えている。多様な表現を横断しながら、鑑賞者に寄り添う作品を目指すその現在地を聞いた。
創造の原点とデジタル表現への歩み
――幼少期の環境や、創作の原点となった体験について教えてください。
原田 幼少期、母親からイラストを描くことを強く反対されていました。しかし漫画的な表現や絵を描きたいという気持ちはかなり強く、小学生低学年の頃に父親に与えてもらったPCでイラストを描くということを覚えました。母は機械に疎く、私がPCで何をしているかわかっていなかったようです。
――その後、どのようにして現在の画風につながっていったのでしょうか。また、技法や素材の選択理由についてもお聞かせください。
原田 当時はインターネットの黎明期で、ペイントで絵を描いては友達にメールで送ってみたり、お絵描き掲示板というBBSでマウスを使ってイラストをちまちま描いては投稿するという事を繰り返していました。あの時期がなければ絵を描いていなかったかなと思います。現在の技法に至った経緯は純粋にイラストを描くうえで効率がよく、私の絵にあっていると感じたからです。
北斎との邂逅──少ない線に宿る圧倒的表現力
――今回の「オマージュ北斎2」では、どのような点に惹かれ、作品のモチーフを選ばれたのでしょうか。
原田 俗にいう北斎漫画と呼ばれるシリーズがかねてより気になっており、是非自分の絵柄でも表現してみたいと思い、今回の作品のチョイスに至りました。
――北斎の表現から受けた影響や、ご自身の制作過程との関係について教えてください。
原田 私はもともとアクリル絵の具で大きなキャンバスに絵を描いていたのがスタートなのですが、そこからインターネットに活動拠点を移す際、デジタルイラストに切り替え、より漫画的な表現を模索するようになりました。線を減らすというのはとても勇気のいる行為で、今の自分のスタイルにたどり着くまでにかなりの歳月をかけました。そういう経緯もあり、北斎の少ない線で必要な情報を全て表現する圧倒的な画力に魅力を感じています。
「ずれ」が生む魅力──印刷文化からの影響
――作品の質感や表現に影響を与えているものについて教えてください。
原田 古い印刷物がとても好きで、特に昭和初期~中期あたりのめんこや雑誌に見られる版のズレがとても大好きなんです。
――その「ずれ」の魅力を、ご自身の作品にどのように取り入れていますか。
原田 未完成だけど味があって、ずれていることによって完成している。自分の作品にもそのような見ごたえを持たせたいと思っています。
制約の中で加速する制作──日常と創作の関係
――現在の制作環境や日常の中での制作スタイルについて教えてください。
原田 現在3年程子供を自宅保育しており、子供が寝たわずかな時間にイラストやコラム、漫画を執筆させていただいています。
――そのような環境や、育った土地は作品にどのような影響を与えていますか。
原田 元々はじっくりゆっくり制作する方だったのですが、時間が限られている方がシャキシャキと色々こなせるようになった気がしています。また、私は産まれてからずっと大阪で過ごしており、大阪の持つビカビカとした空気や街の色は私の作品にかなり影響を与えていると思います。
「遊園地」のように楽しさや共感を広めたい
――現在取り組まれている多様な表現について、それぞれの役割をどのように捉えていますか。
原田 前述した通り私はコラムやイラスト、漫画、絵画といろんなジャンルの事に挑戦させていただいています。イラストは寂しい気持ちや悲しい気持ちになった時に、コラムは眠れない夜のお供になれば、漫画は少しの息抜きに笑ってほしくてと、それぞれ別の軸で動かしています。
――今後の展望と、鑑賞者に向けたメッセージをお聞かせください。
原田 絵を人に見せたいと展示発表を行った当初、私は遊園地のような人間でありたいと思っていました。これからも自分にできる事を拡張し続けて、多くの人たちにいろんな楽しさや共感を広めていきたいと思っています。
執筆:月刊美術プラス編集部